観察(1)
はじめ、蟻の行列は、3センチメートルほどの幅があり、圧迫感がありました。
そこで、行列の幅を狭くできれば、圧迫感を取り除くことが出来るのではないかと考えました。
行列の横の広がりを、立ての広がりに変換できないかと、下図のように、行列の中につまようじを立ててみました。
行列の蟻の中には、数は多くはありませんが、「迷い蟻」と私が呼んでいるものが存在します。
つまようじを立てる前は、「迷い蟻」は、行列から外れて、単独で気ままに行動しているように観察されました。
行列の中にも、「迷い蟻」に近い位置づけの蟻がいたようで、それほど多くありませんが、行列の中の一部の蟻は、つまようじを上り、そして、降りるという行動をしました。
やがて、多くの蟻が、つまようじを上り、そして、降りるという経路をたどるようになりました。
行列の横の広がりを、立ての広がりに変換しようとする私の目論見は、一時的に達成されました。
しかし、やがて、つまようじを上る蟻の数は減少し、やがて、一部の「迷い蟻」を除いては、ほとんどの蟻は、つまようじには見向きもしなくなりました。
そこで、つまようじの先端にエサを付けてみれば、行列の蟻を、つまようじの上へと誘導できるのではないかと考えました。
そのとき使ったのは、ゼリービーンズです。
すると、目論見通り、多くの蟻が、つまようじの上に上るようになりました。
ゼリービーンズは次第に小さくなっていきました。
ゼリービーンズ が残っているところでは、相変わらず蟻は上っていきます。
ゼリービーンズ が無くなったところでは、ほとんど上っていかなくなります。
a のゼリービーンズがなくなると、aのつまようじに上る蟻も、下図のように、ほとんどいなくなりました。(一部の「迷い蟻」を除いては・・・)
次に、aのつまようじの先端にだけ、ゼリービーンズを付けてみました。
すると、やがて、a に多くの蟻が上るようになりました。
ここで面白いのは、
- a に上る蟻が増えるにつれて、下図のように、b や c に上る蟻の割合も増えた
ということです。
これは、とても、不思議な現象だと思いました。
これは、行動フェロモンによって説明することは難しいと思います。
しかし、「蟻が記憶を共有している」と考えてみると、うまく説明できます。
このとき、蟻に、何が起こっているのか?
それは、人間の行動を指す言葉で表現すると、
- 早とちり
- 勘違い
- 曖昧な記憶をもとにしても、目的を達成するための行動を起こすのは難しい
ということになると思います。
- 「面白いイベントがある」と人から聞いて、その場所に行ってみたら、誰もいなかった。そして、そこから隣のビルを見ると、人だかりが出来ていた。
どうです?
行動フェロモンによる説明よりも、説得力があると思いませんか?